北九州市合馬 / すみれ農園

野菜が好きで作りはじめた。美味しさと安心を求めていたらオーガニックにたどり着いた。

福岡県北九州市の合馬で畑をしている、すみれ農園のすみれさん。

子どもの頃の記憶と東京で感じた野菜への想い

すごくシンプルな話で、もともと野菜そのものが好きだったんです。小さい頃、冷蔵庫を開けてお菓子を探したりせずに、歯固め代わりに人参やセロリを咥えたり、祖母が育てたピーマンを齧ったりしてました。「道草を食う」という言葉がありますが、学校の行き帰りに、花の蜜を吸ったり、それこそ生えている草を食べたり、まさにそんな子どもでしたね。野菜に対しての執着の強さは昔からあったのかもしれません。大学を出て、地元を離れて、最初に勤めた東京のコンサルティング会社では身を粉にして働きました。始発で出社、終電で帰宅、土日も会社に出て仕事するくらいハードだったんですが、いま思えばかなりブラックな働き方ですよね。取引先からも「すごくやつれてるよ」と言われ、その方のアドバイスもあって転職活動を始めて、次に勤めたのがAppleです。表参道のストアで接客をしていました。場所柄、外国人やいわゆる意識高い層のお客さまが多く来店されていたのですが、そういう方々や同僚の中にはビーガンであったり、オーガニック食材を嗜好する人が多かったですね。実際に青山エリアには感度の高いカフェやファーマーズマーケットがあって、そこに置いてある野菜は高いお値段がついているのに結構売れている、都会では有機野菜の需要が高まっている、そんな実感がありました。そして「この風潮は、何年かしたら九州にも広まるのかな」「東京で一玉500円のキャベツなら、小倉で300円くらいで売れるかな」そんなことをボンヤリ考え始めました。地元の合馬には耕作放棄地が増えている、そこで無農薬で化学肥料を使わない野菜づくりにチャレンジしてみよう。そんな思いがふつふつと湧き上がって、3年間の東京生活にピリオドを打って、北九州に帰ってきました。

ゼロからのスタート。作ったのは野菜だけでなく人と人のつながり。

耕作放棄地をお借りして、農業を始めて気づいたことがあります。その一つが、肥えた土地と痩せた土地では雑草の生え方も違うということ。まずは土の中の微生物の状態をいい循環にすることが大事で、病気の原因になるカビ菌よりも、乳酸菌や納豆菌が優位だと野菜も育ちやすくて虫もつきにくい。だから土の環境づくりを私が手伝う、農薬や化学肥料は使わずに、雑草と共存しながら。そんな畑で採れた野菜はパワーがあるんですよ。赤ちゃんが無意識に手を伸ばして齧ろうとする、ペットで飼っているワンちゃんがダンボール箱を開けようとする、そんな声をお客さまから聞きました。本能でわかる野菜の美味しさみたいなことでしょうか。知識もノウハウもゼロで勢いで始めた農業ですが、Apple時代から上司に「Letʼ s find out」と言われ続けて自力で調べる習慣が身についていたので、ほぼ独学でここまできました。行政やJAが開催する育成や研修の事業もありますが、それは農薬や化成肥料を使うことが前提なので、農薬の匂いが苦手な私には最初から無理だったというのもあります。何故そんな面倒くさいことするの？って言われるけど、この方法しか知らないし、効率は悪いかもしれないけど、虫が出たら手で潰せばいいでしょ、みたいな性格なので（笑）。

採れた野菜はネット販売で売ったり、直売所に置かせてもらったりしています。それとは別に、例えば、美味しそうなフレンチやイタリアンに出向いって行ったり、紹介してもらったりして、どんな野菜にニーズがあるか取材して、その品種を育てて卸したりもしています。東京時代、ご飯を食べに行くと、普段食べないような珍しい野菜をシンプルに調理して出しているお店とかあって、その印象も残っていたんですよね。みんなと同じものを作っても価格競争になるのでは？という考えもあり試行錯誤しながらやっています。今度、ある直売所の会長役も仰せつかったんですよ。若いもんがやりなさい、ってことで。いまはとにかく合馬に人を呼び込みたいですね。小倉から車で20分くらいで、自然の風景も、おじいちゃんおばあちゃんの素敵な笑顔にも出会えるから、みんなに来てほしいです。たくさん野菜が揃っていることもあれば、季節や天候によってはあまり採れてない時もあるけど、それが自然なので。SNSやインターネットでチェックしていただいて合馬に足を運んでいただけると嬉しいです。

TSUNAGU VOICE

心とカラダの健康のために、そして、サスティナブルな未来のために、本当に良いものを選びたい。その中でも厳選したいのが日々の食材。美味しさはもちろん、安心して口にできるのが「すみれ農園」の野菜です。その自然の恵みは一つ一つ滋味深く、シンプルな調味料でも充分ご堪能いただけます。